人生のターニングポイント第4話

湧き上がってくる不思議な気持ち

出会ったばかりの彼に誘われ、疑いも無く参加してみたヨガのワークショップ。
想像とは全くかけ離れ、かなりハードなクンダリーニヨガのクラスだったことを彼も知らず、終わった後は二人で大笑いしビーチに汗を流しに行った。

誰もいない奥まった、ローカルオンリーな私のお気に入りのスポットへ彼を連れて行くと、小さな波が綺麗に割れていた。私達はその波を追いかけ、身体ひとつで波に乗りボディーサーフィンを楽しんだ。ビーチを走り回ったり、流れ着いた大きな流木を組んで小さなティピ(インディアンのテント)を作り、枯れ落ちたヤシの葉を拾い集め上にかぶせ日陰を作っては、その下で時間を忘れ話し続けた。

オーストラリアで育った国籍の混じった人だろうと思っていたその彼は、ドイツ人の両親を持ち、19歳までドイツで育ったという。なんのアクセントもない流暢な英語は、高校時代に留学したカリフォルニアでサーフィンと共に学んだらしい。

生い立ち、家族、文化、サーフィン、旅や人生を語り、別れる間際に同じ歳だということを聞いてお互いにびっくり。

 

「仕事のミーティングが入っているから、僕はそろそろ行くね」時間を忘れていた私とは対照的に、彼は腕時計を見てサラッと帰り支度を始めた。

次の約束もせずに、そのままなんとも言えないふわふわした気持ちに包まれてサヨナラした。

 

家に帰って湯船にお湯をはった。小さな器に荒削りの塩とローズ・ゼラニウムとマージョラムのエッセンシャルオイルを混ぜバスソルト作った。その日の気分によってオイルをブレンドした湯船に浸かるのが、離婚して以来私の楽しみになっていた。

バスソルトをたっぷり入れたバスタブにゆっくりと浸かりながら、その日起きたことをボンヤリとおさらいした。
なんだろう、この気持ち。。。

部屋に戻るとメッセージが届いていた。

「Thanks for the funday Ocean queen♡ – 楽しい1日をありがとう海のクイーン♡」

なんだか恥ずかしくなった。長い間人妻として生活してきた自分が、Ocean queenだなんて呼ばれてる。笑

 

離婚の書類をまとめながら、日中彼のことをよく考えるようになった。

人生のターニングポイント第4話@Carly Brown

 

この人となら本気で遊べる

一週間もしないうちにまたメッセージが届いた。

「Would you like to go for dinner tomorrow night? – 明日の夜ディナーでもどう?」

このメッセージを見た時、私の胸が急にドキドキしだした。

結婚して5年も経てばもう二度と恋する事などないんだろうなと思うのは普通だと思う。(理想的には永遠に旦那さんに恋していたものだけど!)

そして離婚して、32歳。このまま独りで居たいなー、世界も独りで自由に旅したいなーなんて思って居た私が、まさか恋をしている?!

 

ドキドキし過ぎてなんにも食べれないし、緊張で倒れそうになった16歳の様な初めてのディナーの夜を今でもはっきりと覚えている。

食事の後、レストランの側にある大きな無花果の木に登って深夜まで話し続けた。

それから数日経ったある日、友人の主催する映画の上映会に彼を招待した。それは英語字幕付きの日本の映画「おくりびと」だった。

ライチを食べながら二人で初めて観た映画。

 

映画が終わると「家まで送って行くよ」と彼がオファーしてきた。

大雨の帰り道「どこか行きたい?何かしたいことある?」と聞く彼。

「高い丘から、サーフボードのケースに入って濡れた芝の上を滑り降りたい!」

私は深く考えずに、ふと頭に浮かんだ楽しそうなことを言ってみた。

 

「よし、行こう!」

彼は映画を上映したホールの裏山に車を走らせた。カーブをわざとスピンさせながら曲がったりして、私を怖がらせようとした。

 

丘の上に着くとボードをケースから出して準備しだす彼。え?本当にやるの

「Let’s go!」大雨のなか二人でボードケースを抱え、大声で叫びながら全力で走った。ロングボードのケースには二人がギリギリ入るスペース、結構急な丘、そして木々の合間を滑べり降りた。

「これ、木が頭に当たったら僕たち即死するね!笑」結構危ないねって言いながら二人で大笑いした。

ずぶ濡れになりながら夜の森で大笑いしながら走り回った私たち。青春時代の16歳を通り越し、小学生の友達のようだった。

 

「この人となら本気でいつまでも遊べそう」私の心が小さな声でそう言った。

 

人生のターニングポイント第4話

運命を加速させる突然のニュース

「きっぱり全てがクリアーになってから新しい交際を始めたい」と言う私。

「始まってしまった恋は止められない」ときっぱり言う彼。

「君の今の状態も含め、全てをサポートさせてほしい」と言ってくれた。

 

優しい人にめっぽう弱い私。

離婚の書類や、子供のように5年間育ててきたビジネスを手放す準備に胸が張り裂けそうな毎日に加え、新しい家と仕事探し。自分から切り出した離婚だったけれども、消化する過程は簡単ではなかった。確かに、突然訪れた新しい出会いは辛い時期を強くサポートしてくれた。

そして新しい恋に浮かれる暇もなくやってきた大きなニュース、それは妊娠だった。

31歳の夏。

私は大の子供嫌い。

その私が子供を授かる!?

 

小さなクリニックで検査を終え、外に出ると夏の陽の下でぼーっと立ち尽くした。
どうしようとか、困ったとか、嬉しいとかいう感情は全くなく、腑抜けのように心の中は空っぽだった。

仕事が終わった彼を、二人で初めて泳いだビーチへ呼び出した。

どう切り出して良いか分からずに、1時間くらい経ってからやっと口にできた。

「私、妊娠してるって」

「Oh!」彼の反応。

「君は心配?」と聞かれ、とにかくびっくりしていることを伝えた。

私も普通に妊娠するんだー、なんて素朴に驚いていたのだった。

 

彼は出会った時から “しっかり将来を考えて家族を作りたいんだ” といつも言っていた。

それを聞こえないふりをしていた私。

離婚したばかりなのに、そんな責任のある交際なんてしたくない。そんな本音も彼にはしっかり伝えていた。でも彼はめげずに、“Commitment – 決意” とは何か? を常に熱く語っていた。

 

“交際への決意とは縛り合うものではなく、お互いの持つ価値感やビジョンをリスペクトし合うこと、そして2つの異なる世界が近付こうと寄り合うこと”

 

また人と人生を共にする不安や恐怖をもっている私に対して、彼は大きな1滴を落としてくれた。

何度だってやり直せる、それは相手、自分、前からくる物事を信じてしっかり受け止めること。

 

ビーチでのドキドキな告白、結果は・・・
「We’ll be fine, let’s do it! – 僕たちなら大丈夫、やってみよう!」そう言って彼は私を抱き上げた。

 

人生のターニングポイント第4話

 

旅する妊婦がたどり着く場所

昔からカウアイ島と四国に呼ばれている感じが何年もしていた。

おいでおいでと。

 

離婚を機に、その無視し続けていた心の声を聞き直し、呼ばれている感じのする場所を訪れることを決めていた。彼も既に日本に行く予定があったので、日本で落ち合って一緒に少し旅をするのもいいねなんて話をしていた。

が、妊娠が発覚しその旅のプランは大きく変更する事になった。

 

先ずはお互いの両親に挨拶をした方が良いのではないか??

そりゃそうだ! ということで彼の出身であるドイツと私の出身地である神奈川も目的地に加わった。

 

お互いの地元を訪れ生まれ育った環境を体験し合った後、ヨーロッパ、四国を巡り、ガーデンアイランドと呼ばれるカウアイ島を目指しハワイへと発った。

 

カウアイはピュアなジャングルの様だった、その自然の壮大さからなぜこの島がガーデンアイランドと呼ばれるのかすぐに理解できた。世界の映画ロケ地トップ10に入ると言われるのも納得!

島のオーガニックショプの店員さんと世間話をし、私たちがファームで働きながら定住できる場所を探していると話すと、彼女はすぐに「すごく良いファームがあるから連絡してみよう!」と言ってオーナーに電話をしてくれた。

 

そのファームを訪れてみると、そこは何だか一般的なオーガニックファームとは一風変わった雰囲気だった。

 

島で一番綺麗と言われる湧き水が湧き、農作物の肥料にはスーパーフードとして有名なスピルリナ(ミネラルが豊富な藻類)をなんと土に混ぜ込んでいる!ファームは全てバイオダイナミック農法で営われていた。

そして50代くらいの女性がオーナーであるこのファームは無利益で運営されていた。売るために作られていない野菜達。

自分達と働いてくれる人達が食べるだけの分を、最高のクオリティーで作りたいというなんと素晴らしいコンセプト。

 

オーナーは私達をウーファー(労働とアコモデーションのエクスチェンジを基本とした雇用方法)として雇い入れてくれることを即決し、素敵なお部屋と完全オーガニックの食材を提供してくれた。

湧き水を飲み、これ以上元気に育つことはできないだろうキラキラとした野菜を食べ、毎朝ココナッツを幹から捥ぎ取りフレッシュなジュースを飲み、素晴らしい環境で3ヶ月を過ごした。

 

湧き水が湧き出している源から溢れ出した水は小さな小川となってファームの反対側まで流れていた、それを辿って下流に行くと小さな滝と小さなロックプールになっていた。

その滝の下で水浴びをし、少しづつ膨らんできた5ヶ月目のお腹をさすり目を閉じてみた。

 

私たちがこの素晴らしいクリーンな土地にたどり着いたのは、偶然でも、ラッキーでもなく、ここで、この小川でこの子を生み落す為かもしれない。

数日後、ファームのオーナーと晩御飯を共にしていると、突然こんな話が飛び出した。

「あなた達がここで子供を産みたいならば、産んでもいいわよ。希望があれば長期で滞在できるようにビザのスポンサーをしてあげることも出来るわ。」
な、な、なんというオファー。

 

そして彼女の友達で近くに住む、自然分娩&自宅出産のエキスパートである助産婦さんを紹介してくれた。

 

“カウアイで出産?!”

私たちの胸は高鳴った。

Writer : Maki 3 little spirals

Message

次回の第5話では、自分達の居場所を見つけ自分達らしい出産に至るまで。

そして子供嫌いな私がママという新しい人生を踏み出し、葛藤と学び、他では得られないような喜びに包まれる。。。けども大変すぎるー! というお話をお届けします。

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