『何よその男!暗ぁい!……それで?どうしたの?』

電話口で圭介が甲高い声をあげた。

「や、それでそのまま2時間くらい喋って解散したよ。」

イヤフォンのマイクに向かって答えながら、メイク落としシートを取り出して顔を拭う。

『…え、やだ、キスもセックスもなし?!』

圭介は外を歩いているのか、時折車が通り過ぎる音がする。往来で「セックス」なんて言葉を大声で言ってもいいのだろうか、と思いながら苦笑した。

「あるわけないでしょ。会ったばっかりだし。」

『……まぁそっか。ノンケの出会いはそんなノリよね。でもそんなぶっきらぼうな男、あたしだったら即アウトで退散するわ。』

「や、そうなんだけど…」

なんとなく打ち解けた気がして改めて話してみると、加賀美はぶっきらぼうながら受け答えはまっすぐで、それほど悪い男だとは思えなかった。また会いたいか、と言われると正直微妙な気がしなくもないけれど、それは向こうだって同じかもしれないし、一度会っただけでは、人の良し悪しは判断できない。

『でもさ、顔はタイプだったんでしょ?例のセフレくんと比べてどっちがタイプなのよ。』

「祐樹は別に顔が好きなわけじゃないもん。まあ嫌いではないけど、今日あった良平くんの方が、タイプといえばタイプかな。」

『リョーヘイたんね、オーケー、オーケー。キープよ、とりあえずキープ。3回目のデートまでに告られなかったらさっさと捨てて次探しましょ。人口の約半分は男なんだから!』

「まあね、そうだよね。とりあえずは様子見かな…。もしかしたら向こうだってもう私なんかに会いたいと思ってないかもしれないし。」

ふと思い返すと、別れ際にも別に「また会える?」みたいな会話もないままだった。それに、2時間話して、笑ったように見えたのがたった3回という極度の無表情は、もともとの性格なのか、緊張していただけなのか、どちらにしろ、そんな相手とうまくやれる自信は正直なかった。でも今日はメッセージの延長で当たり障りのない話しかしていないし、もしかしたら今後、彼の別の一面を知れるかもしれない。

『ねぇ。そんな都に、ちょっと会ってみて欲しい男がいるんだけど。うちのデパートのアパレルエリアを担当してる営業マンなんだけどね、顔もセンスも中々いいし、営業だからトークもバッチリな独身男よ!……バツイチだけど。でも、彼は間違いなく優良株だから、会って損はないと思うわ。』

「え、何それ。そんなキラキラ系の男は私無理だって。そもそも…バツイチなんでしょ?」

圭介はスーツを着ているちょっとチャラめの男を総称して、イケメンと呼んでいる。ピタピタのスーツに尖った革靴を履いた男が頭に浮かんで、ないない、と首を振ってしまった。

『バカね!バツイチは、肉食女に狩られた男がまた現世に戻ってきた、今狙い目のカムバック物件なのよ?…安心して。彼は子無しだから、慰謝料払ってますみたいなしみったれた物件じゃないわ。それに、あたしもう彼に都と合わせるって約束しちゃったの!お願いだから会うと言って。』

「そんな……、私そういう男は無理だってば。」

『なによ!別に会ってすぐセックスしろって言ってるわけじゃないんだから、社会勉強と思って、ちょっと飲むくらいいいじゃないの。お願い、都、これはあなたのためを思って言ってるのよ?』

本音はただ圭介がタイプの男と飲みたいのだということは、長年の付き合いで良くわかっている。でも確かにまあ、色んな男に会ってみるのも出会いに耐性をつけるという意味では大切かもしれない。

「もー、分かったよ。でも飲むだけだからね?変にくっつけようとしないでよ?」

『はいはい。分かってるわよ。あくまでも気軽な異業種交流会よ。じゃあ日程いくつか出してLINEするわね!』

ハイテンションな圭介との電話を切ってスマホを見ると、加賀美からLINEが届いていた。

『今日はありがとう。色々話せて楽しかった。よければ今度は飲みに行きたいな。』

どうやらまだ脈はあるらしい。とりあえずキープ、という圭介の言葉を思い出しながら、返信をタップした。

『こちらこそ、会って話ができて良かった。是非飲み行こう。』

とりあえずは、流れに任せてみようと思いながら、シャワーを浴びる準備をした。

1 2

Writer : Miranda

Message

「二人とも愛しちゃダメですか?」第6話はこちらから

 

最初から読む方はこちらから

Share iline Facebook Twitter