成城石井で適当に見繕ったワインと、手土産にホテルのショップで買ったマカロンの袋を整えて、インターフォンを押した。
高校からの友人の真紀と学くんが暮らすマンションは、豊洲のタワーマンションの一室で、二人が夫婦でどれくらい稼いでいるのかは知らないけれど、安月給の私よりもだいぶ羽振りがいいことはよくわかる。
「いらっしゃい。華はもう来てるよ。」
出迎えてくれた真紀は、いつもながら輝くように美しく、頭の上でまとめた髪が、明るい玄関の光をキラキラと反射して、ドラマのワンシーンのようだ。シンプルな白いブラウスとジーンズという出で立ちが、彼女の美しさをあますところなく引き出していて、同じ格好を自分がしてもこうはならないという現実に打ちのめされる。
とびきり美人なのに、さっぱりしたまっすぐな性格で、まったくよじれたところのない真紀は、非の打ち所のない自慢の友人だ。
「これ、今日職場で余った花をまとめただけなんだけど、」
真紀のイメージに合わせて、余り物の白い花をざっくりと束ねたブーケを手渡した。
「うわぁ!いつもありがとう!めちゃくちゃ可愛い!ほんと都のセンス大好き!インスタにアップしてもいい?」
少女のように喜んでくれる真紀の笑顔が眩しい。最近新宿のデパートに3号店をオープンした人気アパレルブランドのディレクターをしている真紀は、時々自宅に飾る花を私にオーダーしてくれる。自分とはかけ離れた世界に住む真紀が、一介の花屋でしかない私のセンスを頼ってくれることは、素直に嬉しい。
「都、お疲れ!先にワイン開けちゃった!」
リビングのソファに足を伸ばした華が、グラスを掲げて振り返る。
また髪の色が変わっていて、この間会った時は、アッシュカラーの金髪だったボブスタイルが、派手なピンクになっていた。
「また髪色変えたんだ。いいなぁ、私も少しくらい染めたい。」
ホテルはテナントにも髪色の規定を設けていて、ほんの少し明るめの茶色にしても睨まれてしまう。もうかれこれ8年近く、私はカラーリングをしていない。
「都は黒髪が似合うからいいんだよ!私は顔がうっすいから髪くらい派手にしないと幽霊になっちゃうから。」
華は高校を卒業してから大学には進まず、専門学校に通って美容師になり、今は原宿の美容室に籍を置きつつ、半ばフリーランスのような形で雑誌やテレビのヘアメイクをしている。太くて量も多い私の髪を、いつもいい具合にまとめてくれる辣腕の持ち主で、見た目に反して繊細なヘアメイクで評価を得ている。
真紀と華とは、高校から数えてかれこれ10年以上も仲良くしていて、人付き合いの悪い私の数少ない友人だ。
学生時代に仲が良かった友達も、27、8くらいの頃にバタバタと結婚して、いつの間にか音沙汰もなくなってしまった。
4年前に結婚した真紀は、仕事があるうちは子供は作らない、と宣言していて、今でもこうして定期的に自宅に私たちを招いてくれる。
華は学生の頃からずっと、いつも誰かと恋愛をしているものの、結婚する気は無いと言っていて、ここ数年ずっと、テレビ局のディレクターと不倫関係をつづけている一方で、いろんな男の子と遊んだりして自由主義を貫いている。
二人と比べると、私はパッとしないセフレの祐樹がいるだけで、他に出会いもなく、このままでいいのか不安になるけれど、出会いは運みたいなものだから仕方がない。
それに、花屋としてようやくお局たちの呪縛を振り切れる力もついてきた今、恋愛をするよりも仕事をもっと突き詰めたい、という気持ちがあるのも事実だ。目下恋愛に関しては、運命の流れに任せるしかない。

Writer : Miranda

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