昨日真紀の家で飲んだお酒がまだ抜け切っていないけれど、水曜日は午前中に花が入荷するから、朝からバタバタと忙しい。入荷した花は、すぐに茎を少し切って新しい水を吸わせる必要がある。バイトの子と二人で、花の水替えをあらかた終えると、もう13時を回っていた。

とりあえず、バイトの子をお昼休憩に出して、私はホテルの搬入口にある喫煙スペースで煙草に火をつけた。

ふとスマホを開いて、思わずギョッとして目を見開いた。

出会いアプリからの通知が山のように来ていて、通知画面が埋まってしまっている。

「嘘でしょ?」

思わず一人で声をあげて、慌てて周りを見回した。写真を変えたくらいでこんなに効果があるとは思ってもみなかったのに、想像以上の効果だ。どぎまぎしながらアプリを開いてみると、23件もメッセージが来ていた。

空腹も手伝って、なんだか目眩を覚えつつ、煙草を深々と吸って気持ちを落ち着けてから、メッセージを確認する。

『気になってメッセージしてみました。商社勤務の34歳です。よかったらまずは食事でもどうですか?』

『タイプだったのでメールしてます。とりあえずメッセージやりとりしてから会ってみませんか?』

『写真いい感じです。こちら、優しいとか頼り甲斐があるって言われる奴です。気軽にデートから始めてみませんか?』

大半は当たり障りのないメッセージばかりで、写真をみてもなんだかパッとしない。結局アプリの出会いなんてこんなもんなんだろうか、と思って流し読みしていると、一通だけ毛色の違うメッセージが来ていて手を止めた。

『カメラマンを目指している27です。花屋で仕事をされているとのこと、プロフィールで拝見して興味を持ちました。花の仕事って、写真と同じくものづくりをする仕事で、大変な分やり甲斐も感じる仕事なのかなと思います。撮影で時々花屋の方と接することがありますが、皆プロフェッショナルな意識の高い方ばかりで、尊敬します。アプリでの出会いにはまだ不慣れで、それほど積極的にやっていないんですが、よければ是非お話ししてみたいと思います。よろしくお願いします。』

こんな丁寧なメッセージをしてくる男もいるのか、と思いながら、写真を確認して驚いた。

昨日真紀たちに変えられる前の私のプロフィール写真とそっくりな、斜め上から写した構図の写真を載せている。よくあるポートレート写真で、ただの偶然だとは思うものの、なにか共通点を見つけた気がして思わず見入ってしまった。

長めの前髪で表情がよく見えないものの、まっすぐな鼻筋と、引き締まった口元に、少し伏し目がちなすっきりとした目元をしている。華やかすぎる顔立ちが苦手な私の好きな顔立ちだ。

出会いアプリのプロフィール写真に、宴会で撮ったと思しき写真の切り抜きを載せている男や、加工アプリを使っているのがバレバレの気味の悪い写真を載せている男が生理的に苦手な私的には、雰囲気しか伝わらないけれど、何かを隠しているようには見えないこのメッセージの送り主の写真はよっぽど好感が持てる。

このメッセージと一枚だけの写真だけで何かが分かるわけではないのも事実だけれど、同じクリエイティブな仕事をしているというバックグラウンドにも興味が湧いて、少し迷ってから返信ボタンをタップした。

『メッセージを送っていただいてありがとうございます。カメラマンを目指しているんですね。私はまだ花屋として、自分の表現を模索しているところだけれど、花の仕事はとても楽しいです。私もこういうアプリでの出会いってあまり馴染めなくて、ほとんど使っていないんですが、もし機会があれば是非お話ししてみたいです。』

返信を送信して、改めて自分のプロフィール写真を見た。

真紀のセレクトしたニットも、華がしてくれたメイクも、確かに前の写真に比べて私を良く見せてくれてはいるものの、なんとなく自分のキャラとは違う女になったような気がして、違和感がある。

思わずメッセージを送ってしまったものの、私のこの写真を見てどんな人物を想像したのか、急に不安になってしまった。

Writer : Miranda

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