「どうなの?最近、恋愛方面は。」
昼間からスパークリングワインを頼んで。この店の名物のオムライスを待ちながらグラスを傾ける。
「どうもこうも、相変わらずだよ。」
「例のセフレ君と引き続きよろしくやってるわけね。」
圭介は裕樹のことを「例のセフレ君」と呼ぶ。
「そうなんだよね。さすがにマンネリ化して来てるけど、なんかね、グダグダ続いちゃってる。」
裕樹とは1~2週間に一度会っているけれど、会ってもするのはセックスだけで、一緒に食事をしたこともない。
「まあアッチの相性がいいなら、キープしておくのは全然ありだと思うけど、そろそろ他の男を探してみてもいいんじゃないの?アプリは?使ってる?」
圭介に教えてもらった出会い系アプリも、登録したきりでほとんど開いていない。時たまメッセージはくるけれど、なんとなく素性が知れない相手とやりとりするのが気持ち悪くて、続いていない。今時アプリでの出会いも当たり前になりつつあるのだから、自分の気持ち次第だとわかっているものの、なんだか踏み切れずにいる。
「どうもね、アプリにはまだ抵抗あって…。」
「あなたね、そんなこと言ってたら、永遠に出会いなんてこないわよ?合コンだって、この歳になると、少なくなるんだから。」
圭介の言う通りだ。30をすぎたら急に合コンの誘いが減ったし、たまに誘いが来ても、微妙な男ばかりで結婚を前提に付き合えそうな男は見当たらない。歳を重ねることで、自分が相手に求める条件が厳しくなっているのかもしれない、と思いつつも、条件を下げてまで付き合うことに意味があるのか、と考えてしまう。
「そういう圭介はどうなのよ。いい出会いはあるの?」
圭介の話では、ゲイの世界での出会いはもっぱらアプリ経由になりつつあるらしい。もちろんアプリを使うことに抵抗がある人もいるのだろうけど、話しを聞いている限り、男女の出会いよりもカジュアルにアプリを使って恋人探しをしているようで羨ましい。
「最近不作なのよ。全然タイプじゃない人からメッセージが来て、タイプの男にメッセージを送ってもシカトされてるの。世知辛い世の中よねぇ。まあそもそも、私みたいにオネェ丸出しのオカマはゲイ業界でのヒエラルキーは最下層だからね…。」
一時期圭介は、男っぽくなる、と宣言して「俺」なんて言ってみていたけれど、そういう無理な努力は長続きしない。私も、男うけしそうな服装や髪型にしてみたこともあったけれど、可愛い系のキャラでもない自分が外見だけ取り繕ったとて、気持ち悪いだけだ、と思ってやめてしまった。肩まで伸ばした髪も、コテで丁寧に巻くよりは、無造作でバサバサした質感に仕上げる方が好きだ。
「例のセフレ君と付き合うっていう選択肢はないわけ?」
圭介とはもう何度もこの話しをしているけれど、裕樹と付き合うという選択肢は本当にない。
「ないよ。そもそも33で俳優やりながら配膳のバイトしてる男なんて、未来がなさすぎるでしょ。」
「そうよねぇ…。彼が23歳とかなら、応援したくなるけど、33にもなってそんなことしてる男には「しっかりしなさいよ!」ってけつ叩きたくなっちゃうわね。でも、顔と体はいいんでしょ?あたしも、とりあえず性欲だけ満たせる相手でいいから欲しいわ。」
「なんかさ、もう付き合うまでのあれこれとかほんとめんどくさいんだよね。もう気づいたら付き合ってたい。」
朝起きたら、心から信頼できる素敵な相手と恋人になっていたりしないだろうか、なんて馬鹿げた妄想をしてしまうことがある。
まずは知り合って、何回かデートを重ねて、お互いの気持ちを確認してから告白して……なんて作業が果てしなく面倒臭い。学生時代は、一緒に過ごす時間がたくさんあった。かしこまってデートをしなくても、自然と一緒にいる時間が長くなってきた相手を選べばよかったのに、社会人になると、週のほとんどは仕事をしているから、圧倒的に会う時間が足りない。それなのに、付き合うことに対するハードルは高くなっていて、数回食事をしたくらいで、「結婚しても良い相手かどうか」なんて条件で相手を吟味しなくてはならない。
そんな矛盾を抱えながら、皆どうやって出会ったり結婚したりしているのか、一人づつ問い正したい。
「ああー!どっかにいい男転がってないかしら!」
圭介が大声で言いながらワインをのみ下す。さっき近くに座ったサラリーマンがギョッとしてこっちを見た。私も大声で叫びたい。

Writer : Miranda

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