珍しく仕事が定時に終わって、職場の近くにあるスタバに寄ってから帰ることにした。

タバコが吸えないのは残念だけれど、くつろいで過ごすなら、ドトールよりもスタバに行きたいと思ってしまう。

カフェアメリカーノにヘーゼルナッツシロップを追加したいつものコーヒーをオーダーして、人が少ない2階のテラスの席につく。夜は少し肌寒くなって来たけれど、商店街を見下ろすこのテラス席がお気に入りで、暖かいコーヒーを飲みながら外の風に当たるのが、最高に気持ちいい。

仕事中はあまりチェックできないスマホを取り出すと、加賀美と宮藤さんからLINEが届いていた。

今日はライブハウスの仕事が入っていると言っていた加賀美からは、『これから仕事。』という短いメッセージと、PAブースで自撮りした写真が送られてきていた。

加賀美はおよそ自撮りなんてしなさそうなキャラなのに、近頃よく自撮りの写真が送られて来る。どれもカメラ目線ではない横顔の自撮りが多いけれど、なんだか微笑ましくてつい一人でにやけてしまった。

『私は今終わったところ。仕事頑張ってね。』

と打ち込んで、自撮りではなくコーヒーのカップを撮って返信した。流石に人目があるテラス席で30過ぎた女が自撮りするのは痛々しくて、はばかられる。

宮藤さんからは、『祝!今会議で、クリスマス装飾の件、御社にお願いする方向で話がまとまったよ!』というメッセージが届いていた。

「え、うそ!」

思わずテンションが上がって、声に出してしまった。慌てて周りを見回したけれど、斜め前に座っている男の子はイヤフォンをしながらパソコンを打っていて、私のことなど気にもとめていない。

テーブルの下で、小さくガッツポーズを決めて、宮藤さんのメッセージを読み返した。もちろん、案件を主導するのは金井さんだけれど、企画書を作ってデザイン案を考えたのは私だ。本社に異動して初めての大型案件に、胸が高鳴る。

『ありがとうございます!ご期待に添えるよう、精一杯頑張りますね!嬉しい!』

ついニヤニヤしてしまうのを、コーヒーを飲んでごまかした。

前向きに頑張っていれば、人生はそれなりにうまく回るんだよね、なんて思いながら商店街を行き交う人を眺めていると、不意に圭介から着信が来た。

二人とも愛しちゃダメですか?20イメージ1

『……もしもし都、今何してる?』

いつもなら、割とテンション高めにかけて来るのに、今日はなんだか声のトーンが低い。

「仕事終わってスタバにいるよ。なんかあった?」

『……あのさ、都、例の宮藤さんのFacebookってフォローしてる?』

「え? いや、インスタはフォローしてるけど、Facebookは繋がってないよ。私Facebookほぼ使ってないから。」

『そっか……そうなのね。』

「え、何。Facebookがどうかしたの?」

電話口の圭介の口調に、なんとなく不安を覚えてゆっくりと息を吸い込んだ。

『あのさ、落ち着いて聞いてね。』

そんな言い方をされると余計に不安になる。

「うん……。何、なんかあった?」

『私、ほんの出来心で、ちょっとエゴサしてみたのよ。宮藤さんのこと。』

「え……。うん。それで?」

『なんかさ、食事に行った写真ばっかり上げてるんだけどさ、彼。その写真に、写ってる相手の手が、都の手とは違うなって思って……。』

「え?そりゃあ彼だっていろんな人と食事に行くだろうから、不思議じゃないと思うけど…。」

『や、違うのよ。ここ最近あげてる写真に、派手めなネイルをしてる女の手がよく写り込んでるの。都はネイルしないじゃない? だからちょっと気になって……。写真の雰囲気からして、二人で食事してるっぽくてさ。だから、あたしの思い過ごしかもしれないけど、なんか嫌な予感がするのよ。』

急に頭をガツンと殴られたような気がして、呼吸が浅くなる。

「……それって、私も検索したら見られるかな。」

『うん。アカウントオープンにしてるから普通に見られるよ。ちょっと見てみて。あたしの思い過ごしだといいんだけど、なんか気になっちゃって。』

「ちょっと見てみるね。ありがとう。」

さっきまで小躍りしそうなテンションだったのに、急に不安に駆られてスマホの画面を見つめてしまった。

まさか宮藤さんが浮気なんてするだろうか、と思ってすぐに、二股をかけているのは自分の方だ、という事実を思い出して息が止まりそうになった。彼が、答えを出さない私に対して心変わりをしたとしても、私がそれを責めることなどできるはずがない。

震える手でFacebookを開いて、彼の名前を入力した。

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Writer : Miranda

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「二人とも愛しちゃダメですか?」第19話はこちらから

 

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