「あら、良かったじゃない! 宮藤きゅん真剣なのね!」

いつものカフェのテラス席で、ティラミスにフォークを突き刺しながら、圭介が笑顔で言った。

私の話をちゃんと聞いていたんだろうか。

あれから加賀美にはLINEを送っても既読にさえならず、もう2週間あまりずっと無視されている。あんなことがあったのだから、当然といえば当然だけれど、私の気持ちは乱れたままで、宮藤さんからの食事の誘いも、仕事を口実にやんわりと断ってしまった。

「……というのは、冗談。やらかしちゃったわね、都。」

私は、目の前に置かれたミルクレープに手をつける気にはなれず、カフェラテを一口だけのんでため息をついた。

「ほんと、やらかしすぎてて、どうすればいいのか全く分からない。」

言いながら泣きそうになって、俯いた。

「都はさ、良平くんと宮藤きゅんのどっちが好きなの?」

圭介のしごく真っ当な問いは、ここ2週間あまり私がずっと自問自答していたものだ。

「正直……自分でも分からないの。でも、このまま良平くんとの関係を絶って宮藤さんと関係を続けるのも、なんか違う気がするし、でもだからと言って加賀美を選ぶのかって言われると、それもなんか違う気がして。」

自分の言葉の身勝手さに打ちひしがれて、またため息が漏れる。私は一体何がしたいんだろうか。

「でもさ、少なくとも宮藤きゅんとはセックスもしちゃってるわけだし、彼は都と結婚を考えてもいいって思っているわけでしょ? そう思えば、良平くんよりも宮藤きゅんとの関係の方が幾分先に進んでるわけだから、連絡も取れない良平くんに執着せずに、宮藤きゅんとの幸せな未来を選んでもいいんじゃないの?」

圭介の言う通り、宮藤さんとの関係の方が進展はしているけれど、不器用で奥手な加賀美に惹かれていたのも事実で、結局のところ、そんな風に二人を天秤にかけて関係を築いてしまった私に全ての原因がある。

そして、そんな私のどっちつかずな態度が、加賀美を傷つけてしまったのだと思うと、加賀美がもう私と関わりたくないと思っていたとしても、一度ちゃんと会って話がしたい。でもそれさえも、加賀美からすれば私のエゴになるのだろうか。

「私ほんとにどうすればいいんだろう。」

考えれば考えるほど、答えが見えなくて気持ちが混乱してしまう。

「都、これはもう、良平くんと話をしないことには解決しないわ。この場合、選ぶのは都じゃなくて良平くんだと私は思うわよ。都がどんなに良平くんのことが好きだったとしても、良平くんが『もうあなたとは付き合えません。』って言うならそれが全てじゃない。」

圭介の言う通りだ。でも、もし加賀美にはっきりと、もう付き合えない、と言われたとして、私はそれで納得して宮藤さんとの関係を前に進めることができるんだろうか。

いっそ全てを振り出しに戻すことができたら、どんなにいいだろう。

「でも……LINEしても返信がないから、彼の言葉を聞きたくても、どうにもできないよ。」

また泣き言を口にした私の目の前で、圭介がパンと手を叩いた。

「都! しっかりなさいよ! LINEに返信がないなら直接会いに行くまでよ。知ってるんでしょ? 彼の家とかバイト先とか。」

私ははっとして顔をあげた。

「……家の場所は駅しか知らないけど、バイトしてるライブハウスは知ってる。」

「決まりね。行くわよ。場所はどこ?」

「新宿の花園神社の近く。……え、今から行くの?」

「善は急げって言うでしょ! さっさとそれ食べて! あなたこのままだと絶対悪い方にしか行けないわよ。見てられないわ。宮藤きゅんを紹介したのはあたしだし、一緒に行ってあげるからちゃっちゃと解決するのよ!」

「で…でも、心の準備が……。」

「おだまりなさい。どうせ考えたって同じよ。彼に会ってみて、その時感じてることを全部話せばいいの。」

圭介に急かされて、ミルクレープにフォークを入れた。

加賀美に会って、何を話せばいいんだろうか。

そもそも、バイト先に行ったところで、会ってくれない可能性だってある。

「都、いい? 人との関係って、話し合い以外で解決することなんてないの。現にあなた、ここ数週間そうやってずっとうじうじしてるけど、何も解決に向かってないんだから、もう会って話す以外、策はないのよ。腹くくんなさい。」

急に動悸が早くなって、みぞおちのあたりが苦しくなる。圭介の言葉は確かにその通りだけれど、悪い方にばかり考えが向いてしまう。

頬張ったミルクレープは何の味もしなかった。

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Writer : Miranda

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「二人とも愛しちゃダメですか?」第14話はこちらから

 

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